君恋1-1

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 人生経験でいえば、確かに彼の方が上だろう。  しかし、同性に恋をしたなどという経験は、きっと無いだろう。  うん、絶対ない。  異性に例えて相談すればいいのかもしれないが、やはり同性である事実に引け目を感じてもっと落ち込みそうでやっぱり駄目だ。 「ありがとうございます。でもそのお気持ちだけで十分ですよ。――ちょっと、寝不足なだけなんで」  自分の言い訳についてのレパートリーの無さを恨んでやりたい。  いや、言い訳すること自体良いとは言い切れないのだが……。 「また寝不足? 若いからって油断してると体壊しますよ」 「ハハハ。そうですね、気をつけます」  案の定突っ込まれてしまったことに、笑って誤魔化す。  木村さんは午後の仕込みがあるからと、そのまま厨房へと引っ込んで行った。  俺は一人になったテラスで大きな溜息を零しながら、最後のテーブルを拭きにかかる。  ――「優一、最近溜息多くない?」――  ふと、神条さんの言葉が頭を過ぎった。
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