君恋1-1

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 冗談めかし込んで、実は神条さんのこと好きだったんだよなーなんて男相手に打ち明けたところでいい笑い草だ。 「――小笠原じゃあるまいし」  奴ならそれくらいのこと飄々と言ってのけそうだ。 「ん? 優ちゃん今呼んだ?」 「っ⁉」  ぼそりと貶した相手がひょっこり顔を覗かせてきたもんだから、俺は思い切り仰け反った。 「な、何でもねー。っつかお前、その呼び方は止めろって言ってんだろうが!」 「えー。今お客さんいないし、いーじゃないっスか」 「そういう問題じゃねえ。仕事中くらいは上司を敬えコラっ」  注意しながら使用済みの布巾を小笠原の手に押し付けた。  誰に対してもフレンドリーな彼は、隙あらばこうしてスキンシップを取ってくる。  普段から敬語を使えと言っても、プライベートの時までそんな堅っ苦しいのは嫌だと言って聞かず、それでも最初は渋々使ってくれていたのだが最近になってそれがまた崩れて来ているように思う。明らかに。
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