君恋1-1

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 スタッフルームほど広くは無いが、私物が無い上にきちっと整理されている分、変に気を遣う必要がないため、俺にとってはこっちの方が居心地がいい。  幾つか置かれたデスクの内一つに歩み寄り、置きっ放しにしているノートパソコンを立ち上げた。  カチカチカチとパソコンが音を立てて準備を始める間、俺はエプロンの紐を解いて無造作に隣の椅子に引っ掻けた。  インスタントコーヒーとお茶くらいならこの部屋にもある。  昼過ぎに座り仕事を始めると、どうしても眠気に襲われるため、出勤したら必ず電気ポットにお湯を沸かすようにしている。  俺は卓上に置かれたポットまで行き、英と書かれた自分のマグカップを手に取った。 「……今日はブラックにしとくか」 俺は迷うことなくコーヒーを選んだ。  それを持ってパソコンのあるデスクまで戻ると、デスクトップ画面には気持ち良さそうに寝ている猫の画像が表示されていた。  どうやら準備は万端らしい。――が、この猫の背景は俺の趣味ではない、決して。  仕事用のパソコンでスタッフも普通に使うため、誰かが勝手に設定したのだろう。 (変えても次開いた時には元に戻ってんだよな)
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