君恋1-1

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「分かったから落ち着け。場所は?」 『トイレの前ですっ!』 (やっぱり……!)  客用トイレは入口も死角になっていて、近付かない限り外からは見えないようになっている。  そこで待ち伏せしていた客に捉まったことが前にもあって、それからスタッフは使用禁止という決まり事ができたのだ。 (だから、上使えって言ったんだあのバカはッ) 「すぐ行く」  俺は受話器を戻して今開いているページを上書き保存するのを忘れずに、事務室を慌ただしく出て下に向かった。 「日野。状況は?」  階段の下で俺を待っていたのか、おろおろしている日野が目に入って声を掛けた。 「あ、店長! それが、全然状況が変わらなくて……」 フロアにいる他の客も、困惑した面持ちでトイレの方へ視線を向けていた。
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