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二人の友人の後ろで泣いている彼女の手には、可愛くラッピングされた包みのような物が握られていた。
許可してやりたいが、これを許したら他の客に示しがつかない。
(――仕方ねぇ……)
俺は状況を瞬時に把握し、ある考えを頭に浮かべで騒ぎの中心へ歩を進めた。
「小笠原」
彼を呼ぶと、一斉に視線が俺に向けられた。
珍しく救いを求めるような小笠原の視線に、つい苦笑を零してしまいそうになる。
「店長……」
「お前、休憩に行って来い」
「え……? や、でも……」
「いいから」
「……」
自分が招いたこの修羅場を、放り出していくことに納得がいかないのだろう。
普段のお調子者が苦痛に眉を寄せているのを見るのは、俺だって気持ちのイイもんじゃない。
それでも覆らない俺の命令に、渋々ながらも納得したようで、小さく頷いてこの場から離れて行った。
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