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近くまで来ていた日野に背中を押されて歩く小笠原を一瞬視界に入れてから、俺は未だ納得のいっていない様子の女子高生たちに視線を向けた。
店の長である俺が出てきたことで、バツの悪そうな表情を浮かべている。
「――それ、こちらに渡してもらえますか?」
ハンカチを握り締めている彼女に、俺は右手を上へ向けて差し出した。
すると、それを悪い方へ捉えたのか右側に立つ女子高生が彼女の前に一歩踏み出した。
「ちょ、もしかして……捨てるつもりですかっ?」
そう来るだろうと思っていた俺は、薄く浮かべた笑顔を絶やさないまま首を横に振る。
「いいえ。私が預かって彼に渡しておきます」
言われた事が良く理解できないのか、彼女等は互いに顔を見合わせている。
「で、でもさっきは受け取れないって……」
「ええ。ルール違反です」
「じゃあどうして……」
「もちろん、今後はありません。今回のみ、私を仲介役とさせて頂けるのであれば特例で認めるということです。――どう致しますか?」
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