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友人の後ろに隠れている彼女に視線を向けて、努めて優しく問い掛けた。
「ミホ! 折角だし渡してもらいなよ!」
「うんうんっ。絶対その方がいいって!」
友人等に説得されながら、涙で目元を赤くした彼女が遠慮がちに視線を向けてきた。
「……じゃあ、すみません……お願いします」
か細い声で紡ぎながらそろそろと差し出された包みを、俺は丁寧に受け取った。
「はい。確かに」
そして腰を軽く曲げ、彼女の視線の高さまで顔を持ってくると、俺は諭すように囁きかけた。
「それじゃあ、今後は気をつけて。彼をあまり困らせないようにね」
「は、はいぃ……」
目元を染め彼女の上擦ったような返事には心中で首を傾げたが、承知してくれたなら良しとしよう。
(収拾成功。――アイツは大丈夫か……?)
俺はスタッフルームで休憩しているはずの小笠原に意識を向けつつ、戻ってレジ打ちをしている日野と、心配そうに様子を見ていた客達に声をかけながら二階に舞い戻った。
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