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俺は椅子に座ったまま、呆然と閉まった扉を見つめる。
(……嫌われた? いや、でも……)
それとは違う気がした。
(あの人でも取り乱す事あるんだな……)
「いや、そりゃあるだろうけど! ――すげぇ吃驚した」
独り言ちながら、漸く払われた手を庇うように押さえた。
「からかったつもりはないんだけど……でも、あとで謝っとくか」
パソコンをシャットダウンして、俺はカフェ用のエプロンを腰に巻き付けて部屋の電気を消した。
厨房に入ってまずは木村さんに挨拶を済ませ、テラスで動き回っている小笠原に声を掛けた。
「お疲れさん」
「あ、てんちょー! 遅いっスよ、もー!」
メニューブックを持って駆け寄って来た小笠原。
相当忙しかったのか息が弾んでいる。
「遅いって……、俺はP帯だぞ」
「それは知ってるけど! 今日はめっちゃ忙しいんで手伝ってほしかったんスよ!」
言われてみれば、昨日よりも客の入りがいいようだ。
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