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止めていた手を再度動かしながら密かに眉を寄せた。
俺だって出来れば無断でやりたい。
今はまだ、神条さんと話す事すら億劫だからだ。
彼に可愛い彼女ができたなら、俺は祝福すべきなのだろう。
(分かってる。けどさ……)
とにかく、恋愛は今の俺には必要のないものだ。
そう思っていないと仕事に集中できやしない。
いつの間にか布巾を握る手に力が入っていた事に気付いた俺は、何かを吐き出すように小さな溜息と一緒に布巾をひっくり返して綺麗な面を向けた。
そんな中、小笠原が床をモップがけしながら俺の後を追ってきた。
「てんちょー」
「今度は何だ?」
小笠原を視界に入れると、内緒話をするように口元に手を当てて俺に顔を寄せてきた。
「なんか変じゃないっスか?」
「? ……何が」
「片山さんっスよ。今日やたら視線感じるんスけど」
聞きながら、小笠原が見ている方に顔を向けた。
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