君恋1-1

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 やっと目が合ったかと思ったら、直ぐに逸らされてしまった。 (やっぱり怒ってんのか?)  片山さんの視線は小笠原に向けられた。 「何か用事か?」 「片山さんにちょっと訊きたい事があるんスけどぉ」 「ちょっと待て! 本気かおまッ――むぐ⁉」 「てんちょーは黙っててー♪」  阻止しようと思ったが、素早い身のこなしで背後を取られ、あっさりその口を小笠原の手によって塞がれてしまう。 「片山さんって」 (――⁉ バカ! 止せ‼)  もごごと喉から音は出ても声にはならず、次の小笠原の言葉に何とも言えない汗が噴き出した。 「てんちょーの事、好きっスよね?」 (っ――!)  やっとの思いで口を塞ぐ手を引っぺがす。  ゆっくり息を吸う暇もなく、俺は片山さんにぎこちない笑みを向けた。 「か、片山さん! コイツの言う事は本気にする必要ないですからね。冗談で訊いただけなんで!」  アハハと空笑いを付け足す。
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