君恋1-1

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 そこへすかさず小笠原が口を挟んだ。 「冗談なんかじゃないっスよ。どうなんですか? 片山さん」  詰め寄る小笠原はマジモードだ。 (そんなこと訊いたって困らせるだけだろうが!)  俺は小笠原を睨んでから、恐る恐る片山さんの顔色を窺った。  やっぱりあまり表情は変わらないが、あきらかにいつもの彼ではない。  彼ではないけど……。 (なんか、深刻そうな顔だな……)  俺が思っていたのとは違う表情を、片山さんは浮かべていた。  どこか真剣味を帯びているような……。  小笠原の勘が外れているのなら、そんなわけないだろって笑いながら答えてくれるはず。  俺はそう思っていた。 「……片山さん?」  彼の反応が気になって、つい伺うように声を掛けてしまう。  そして片山さんのキリッとした眉が中央に寄せられ、困っているような表情の中に、僅かにだが照れているような雰囲気もあって……。 (いや……気のせい気のせい)  自問自答に苦しむ中、片山さんが口を開いた。  その時――、
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