プロローグ

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(ダメだ。考えるな! もう終わった事じゃねーかっ)  蛇口のハンドルを感情のままにガコッと下げる。  止まった水と比例するように心を落ち着かせ、身につけている小笠原と同じエプロンからハンドタオルを引っ張り出した。  洗濯したばかりのそれで、未だ濡れたままの顔を拭く。 「あ、店長。おはようございます」  入れ違いでトイレに入って来たのは四十代の男。  いつもの白いコックコートではなく、まだ私服姿のところを見ると、出勤してきたばかりなのだろう。 「おはようございます、木村さん」 「今日も店長目当てのお客さん、予約入ってますよ」  この話の流れは、ついさっきもあった気がする。
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