第1話:休日ニートシテタラ、周リノ状況ニオイテカレテタ

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今思えば、最初の情報は金曜の昼休みに同僚が言ってきたニュースの話だった。 「これ、孝輔さんちの近くじゃないの?」  彼の机のディスプレイの中のブラウザには、伊豆の商店街でイノシシ暴走!なんて見出しが表示されていた。  他にニュース無いのかよ、なんて思いはしたが、数年前にも会社近くの住宅地で猿が暴れてニュースになってたのを思い出し、まぁそんなものかと思い直した。  とは言っても会社は富士山の麓にあり、電車を3路線乗り継いで出勤している自宅からは結構な距離がある。  三分の一は自分の趣味で、残りは嫁と子供の為に・・・・、なんて理由で伊豆の別荘地にある一軒家を借りたのは一昨年の夏だった  結局、義父の入院やあれこれあったおかげで、嫁は子供達連れて四国の山奥の実家に帰ってしまい、今は気ままな独身貴族(金と期限は制限あり)なんて事になってる。 匂坂 孝輔、38歳。メーカー系サラリーマン、嫁と子供が二人のなんてことない、その辺に良くいる親父の1人だ。  その後、いつも通りに仕事をこなし、いつも通りに残業をし、遠い家路についた。  帰宅途中もなんて事はないいつもの日常で、電車を乗り継ぎ家に向う。  高校生らしき集団が、 「シ○神出たらしいぜ!」  なんて騒いでたので、なんとなく昼のニュースの猪の話か、と思ったくらいだ。  最寄り駅で原付に乗り換え、家をめざす。  安い一軒家なんてのを探したおかげで、山肌にへばりついた様な別荘地の一番奥なんてとこになってしまった。  まあ、一番奥なんて場所のおかげで、庭や家の中を覗かれる様な位置に隣家は無いし、それどころか隣家は鬱蒼とした林の向こうだ。アラフォーの休日ニートには、近所付き合いなんてのは無いほうが、都合いい。  別荘地なので、永住している人数は元々少ないし、近所付き合いが成立するほど賑やかな場所ではないのだが。  駅裏の深夜営業してるスーパーで食材と雑貨を買い込み、山を登る。酒はまとめ買いしてるので、月1の買い出し時以外にはあまり買わない。  さて、これで週末は出掛けずにニートができる。
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