第1話:休日ニートシテタラ、周リノ状況ニオイテカレテタ

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 擬人化されたキャラのデザインに、そして、フルボイスの台詞に、散りばめられたオタ心を擽るネタの数々に魅入られ、ついついデイリーのクエストをこなし、レベルを上げ、その世界に浸っていた。  システムとして、他者との交流が無いのも良かった。  普段ゲームをしない人間にとって、煩わしい人間関係も無くその世界に浸っていられるシステムはかなり有り難いものだった。  まあ、だからこそ嵌まってしまい、休日ニートなんて状態を満喫してしまっているのだが。  とりあえず、デイリーのクエストをこなし、お気に入りのキャラを眺め、妄想世界を満喫して、今夜は寝る事にした。  仕事の疲れもあるし、何より週末の二日はどっぷりとヲタな世界に浸っていられるのだ。焦って今夜アイテムを消費してしまうより、明日じっくり楽しもう。  お気に入りキャラの姿に心惹かれつつブラウザを落とし、寝室へと向かった。  嫁の居ないダブルベッドは冷たいままだったが、まあ、仕方ないと溜め息を一つついて目を閉じた。  そんな感じで、特にマスメディアの情報に触れる事無く、外界に出る事もなく、家事をこなしつつもブラウザゲームを楽しみ、現実嫁と他愛ないメールを交換したりして、休日は過ぎて行った。  そう、この時はまだ気付いていなかった。  日曜の午後8時過ぎだった。  急に、市役所の広域放送のチャイムが鳴り響いた。 「市役所広報課です。」  そこまで聞いて、意識をゲームに戻した。  少なくなったアイテムをどう使うか悩んでいた。  何時もの居なくなった老人に関する放送には興味が無かった。  今思えば、多分これが二番目の情報だったのに。  結局、放送は気にも止めず、10時頃までゲームをして、寝た。  別荘地の奥まった区画にある我が家は、この時まだまだ平和だった。
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