2人が本棚に入れています
本棚に追加
朝、6時前に、寝室から出て、キッチンへと向かう。
昨日作り置きしておいた、照り焼きチキンとポテトサラダ、そしてさっと作った玉子焼きを弁当箱に詰める。
顔を洗って歯を磨き、寝癖あたまを水で整える。
とりあえず、サラリーマンとして、最低限の身嗜みを整え、準備を整えた。
キッチンの裏手にある勝手口から出て、小さな階段を下ると、小さなガレージがある。
扉を潜り抜けると、二台車があり、その向こう側から、一台の古いカブを引っ張り出した。
ガレージのシャッターを開けて、カブを引っ張り出し、またシャッターを閉じる。
エンジンを掛けてカブに跨がると、木々の向こう側に、キラキラ光る海と、ちょうど昇り始めた朝日が見えた。
軽いエンジンの音と共に山を下る。
早朝の別荘地は静かで、風も無く、木々の間にカブのエンジンの音だけが響いていた。
山道を少し下ると、川沿いの道に出る。
このあたりが、別荘地と住宅地の境だ。
そうは言っても特に柵や門があるわけでもなく、管理人が常駐しているわけでもない。
山と平地の境が、ちょうど別地との境になってる。
住宅地の緩い坂を下り、海に近い駅に向かう。
ふと違和感を感じた。
何時もなら、駅に向かう学生やサラリーマンが何人か居るはずなのに、今日は一人も居ない。
以前もそんな事があった。
あの時は、祝日だったので、人が少なく、世界中の人が消えて一人になってしまった妄想が膨らみ楽しかった。
まあ、祝日が関係ないカレンダーの勤務体系になってるから、他人とちょっとずれてるのが悪いのだ。
今日はなんか祝日だったかな?なんて考えてると駅に着いた。
電車の出発時刻の15分前。
うん、今日も誰も居ない。
ここは何時もと同じだ。
何時もは、途中の道で追い抜いた学生やサラリーマンが徐々に現れ、5分前にはホームがそれなりに人で一杯になる。
ところが、今日に限っては誰も来ない。
この駅は早朝夜間無人駅なので、駅員が居ない。
なので、今は本当に誰一人居ない。
もしかしたら、と、また世界中に自分一人妄想が疼き始めたタイミングで、いつもの構内放送のチャイムが鳴り響いた。
最初のコメントを投稿しよう!