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「まもなく駅に列車が到着いたします・・・・。」
何時もの定型文のアナウンスが駅の構内に響き渡る。
駅に書かれた搭乗口の番号を確認し、何時もの場所に立つ。
人気の無い駅構内に違和感を感じつつも、世界中に自分一人妄想を再開したところで、汽笛が聞こえた。
ふと顔を上げると、電車のライトが見える。
構内放送のタイミングからすると、何時もより到着が早いなぁ、なんて思った。
電車は何時ものように駅の構内に滑り込み、そして。
何時もとは違う速度で駅を通り抜けた。
「え?」
違和感なんてもんじゃない異常事態に、妄想が断ち切られる。
何時もなら減速しプラットフォームに停車する電車が、減速もせずに、通り抜けていった。
そのまま、若干加速したように見えた電車は、駅を抜けてすぐのカーブに減速せずに突入し。
派手な音を立てて、脱線横転した。
違和感だらけの現実味がまったく無いその光景を見ながら、もう一つの光景が、頭の中を駆け巡っていた。
今通り過ぎた電車。
窓ガラスが、真っ赤に染まっていた。
あれは、血じゃなかったのか?
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