1 心の宿り場所

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「あの太い木は、御神木と言って。神の宿る木でな。太い枝と揺らす葉の中に、隠れておいでなさる。アンテナのような角を立てて、大きな耳で、わしらの心の声を聞いていなさる。そして空の変化を感じながら、川面で水の推移を制御して、わしらを水害から守っておいでなさる」 「おぉーっ、有り難うございます!」 隣りの誠実は、 「子どもって、無知だから。質問がストレートで単純。実に面白いなぁ」 小声で言って、笑ってる。 すると、誠実のスマホがバイブルした。 慌てて、 「ごめん、会社から。何だろうな。ちょっと、向こうで話してくる」 「うん」 誠実は神社の隅の方へと移動した。 最近、よく会社からの電話。 休日なのに。 ゆっくり出来ないなんて、気の毒に。 きっと今、忙しいんだよね。 しばらくして、お婆さんは拍手と共に退場して、社の脇の集会所に入って行った。 誠実も戻り、私たちはも石段を下って帰って行った。 今日も、穏やかで静かな休日だったな。 私はとても満足だったけど。 誠実はどうだったのかなぁ。 私のお気に入りの、「心の宿り場所」。 誠実は気に入ってくれたかしら。 どうしても、ここは誠実には教えたかったから。 一生を共に送ってくれる人には。 大切な場所を、教えたかったから。
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