1 心の宿り場所

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「こら、そんなに急ぐなよ」 今日は待ちに待った、彼氏の誠実(せいじ)とのデート。 しかも今から私のお気に入りの場所に、誠実を連れて行くものだから、私の足は軽やかで、ついつい急いでしまう。 「おまえはあまり疲れたらダメなんだから、ゆっくり歩きなさい」 「今日は涼しいから平気よ」 一級河川に沿って歩くから、風が何となく吹くと涼しい。 太陽の光も逆を向いていて、今は日陰になってる。 だから、ちょうどいい感じ。 疲れたらダメだなんて。 他の人が聞いたら、なんてダラけた女なんだ、と思われちゃうじゃない。 「平気って言ったって、としこは人よりも発汗作用が強いんだから」 良く言う、汗っかき。 そして、疲れたりすると熱が出ちゃう。 小さい頃から、とくに夏場は脱水症状でよく保健室で横になってたっけ。 だからいつも、体育や遠足はパスしていた。 身体が弱い訳じゃないの。 病気でもない。 でも、原因不明の私の症状に両親や周囲の人間たちは、いつの間にか私を虚弱体質なのだと勝手に決め付けていた。
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