1 心の宿り場所

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「そうだったんですね。はい、今日は特別な日です。良かったらもうすぐ、始まりますので、ご存知だとは思いますが、また聞いていって下さい」 先生は頭を下げて、園児の方へと戻って行った。 私と誠実は、手洗いを済まして小さな社へと向かう。 二礼二拍手、そして一礼。 静かに横に佇む、樹齢の古い、太くて大きな御神木の側へと向かう。 「しかし、立派な御神木だなぁ」 緑色の葉をハラハラと音を鳴らして揺れる、私には優しい御神木。 「嫌な事があって、怒りが鎮まらない時に、こうやってこの幹に頬を寄せてね、心を落ち着かせるの。そうすると、不思議とスッキリしちゃうんだよ」 私の言葉に誠実が、御神木に触れた。 「痛っ…」 幹が指に刺さった。 「…どうも僕は、受け入れて貰えないみたいだ」 そう穏やかに笑って、指の傷を誠実は見つめた。 すると、幼稚園の先生が散らばる園児を集め始める。 しばらくして、行儀よく園児たちは座って落ち着き始めた頃。 「特別な日、もうすぐ始まるよ?」 「せっかくだから、聞いて行こう」 私たちは園児たちの後ろに、そっと立った。 「はい、拍手」 先生の一声で、拍手で、ある人を出迎えた。
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