31人が本棚に入れています
本棚に追加
「そうだったんですね。はい、今日は特別な日です。良かったらもうすぐ、始まりますので、ご存知だとは思いますが、また聞いていって下さい」
先生は頭を下げて、園児の方へと戻って行った。
私と誠実は、手洗いを済まして小さな社へと向かう。
二礼二拍手、そして一礼。
静かに横に佇む、樹齢の古い、太くて大きな御神木の側へと向かう。
「しかし、立派な御神木だなぁ」
緑色の葉をハラハラと音を鳴らして揺れる、私には優しい御神木。
「嫌な事があって、怒りが鎮まらない時に、こうやってこの幹に頬を寄せてね、心を落ち着かせるの。そうすると、不思議とスッキリしちゃうんだよ」
私の言葉に誠実が、御神木に触れた。
「痛っ…」
幹が指に刺さった。
「…どうも僕は、受け入れて貰えないみたいだ」
そう穏やかに笑って、指の傷を誠実は見つめた。
すると、幼稚園の先生が散らばる園児を集め始める。
しばらくして、行儀よく園児たちは座って落ち着き始めた頃。
「特別な日、もうすぐ始まるよ?」
「せっかくだから、聞いて行こう」
私たちは園児たちの後ろに、そっと立った。
「はい、拍手」
先生の一声で、拍手で、ある人を出迎えた。
最初のコメントを投稿しよう!