1 心の宿り場所

6/10
前へ
/41ページ
次へ
脇の方から静かに、腰の曲がったご老人の女性が現れた。 私が幼稚園児だった時もお婆さんだったのに、今も健在となると、きっともう90歳は越えているだろう。 支えがないと歩けないようで、ゆっくりと歩いて、パイプ椅子に座り込む。 先生が言う。 「今日はみんなが一生懸命、この神様のお家、神社をお掃除してくれたでしょ?どうして、この神社のお掃除をね、○○幼稚園の君たちがしなくては行けないのか。それをね、今日はこちらの素敵なお婆ちゃまが、教えてくださります。みんな静かに聞いてくださいね」 そして、お婆さんが話始める。 「みなさん、まずは今日は本当にこの神社のお掃除をしてくれて有り難う。私はこの神社を長い間、大切に守り続けている管理者の、永田ハナと言います。この世に生まれて、もう96歳になります」 そこで園児たちの、一度目のどよめき。 「ここのお掃除は、すぐ側に有る○○幼稚園のみなさんに、毎年いつも頼んでいます。どうしてなのか、それをみなさんに伝えたいと思います」 私が幼稚園児だった時と、話し方は全く変わらない。 強い目をして、しっかりとした口調でお婆さんは話を進める。
/41ページ

最初のコメントを投稿しよう!

31人が本棚に入れています
本棚に追加