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「昔、昔、私がまだ生まれる前。私のお爺さんとお婆さんには、私の母と、母の兄がいました。私の母は、兄と呼ばれる子どもを知りません。母が生まれた時には、もう兄という人は死んでしまっていたのですから」
子どもたちは、その言葉に急に静かになる。
「ちょうど今、あなたたちが過ごす幼稚園がある場所には、お爺さんとお婆さんの畑が有って、この神社の下にお爺さんとお婆さんのお家が有りました。ある時、大雨が何日も何日も降り続き、目の前に有る大きな川の水は、勢いよく溢れ出してしまい、大洪水で、まるで深いプールのようになってしまいました」
そして、2度目のどよめき。
「みなさんの中で泳げる人は何人いますか?泳げる子は手を上げてごらん?」
大半、ほとんどが手が上がる訳もない。
もちろん、カナズチな私は当然、手は上げられない。
誠実は高々と手を上げていて、ちょっぴり私は笑ってしまった。
「みなさんが泳げないと言う事は、その頃のみなさんと同じくらいの子どもたちも泳げる訳もなく、その大洪水で多くの小さな子どもたちが流され、死にました」
また、子どもたちは怖くなって静かになる。
「そして、私のお爺さんとお婆さんの子ども、私の母の兄も、流されて死にました。他の子どもの死体は見つかっても、可哀想な事に、母の兄は見つからない。何年経っても、見つからない。それは今でも…」
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