1 心の宿り場所

9/10
前へ
/41ページ
次へ
「…この神社を後継しています。みなさんがこうして今を生かされている、楽しい毎日が送れるのは、あの時の、小さくして命を失ってしまった子どもたちの、生まれ変わりだからです。だから、ここに生まれ、ここで育ち、大人になる時に、一緒に、その悲劇の子どもたちの分までも生きて行って欲しいです。これが私からの、忘れないで欲しい大切な話です」 何度聞いても、涙が止まらない。 大人になっても、確かにこの話を思い出すと、急に涙が溢れ出していた。 きっと、この子たちも、将来そうなる事があるのだろう。 質問コーナーで、園児たちは明るく見境なく、お婆さんに言葉をかける。 「龍は怖い顔して怒ってるみたいなのに、どうして神様なんですか?」 お婆さんは笑って答える。 「君のお父さんとお母さんはどうかな?優しいばかり。笑っているばかりではないじゃろ?」 園児はモジモジして、うなずく。 「人間と同じで、何かを守る者は、怖い顔してではないと守れないのじゃ。優しいだけでは、心に伝わらない事もある。だから龍神様はいつも、子どもであるわしらを、見守っておるのじゃよ」 「はい!」 「はい、君」 「龍神様って、いつもはどこに居るの?」
/41ページ

最初のコメントを投稿しよう!

31人が本棚に入れています
本棚に追加