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その光景を見た瞬間、アズールは硬直した。
「は……はぁ!?」
自分の獣が完全に掻き消された事実に驚くアズール。
さきほどネイムはあの獣を消すことができずに苦戦していたはずなのに、今あっさりとそれを消し去ってしまった。
「いくぞ、アズール」
進路を遮る獣が消えて前へと駆け出したネイム。
「た、たかが一回のまぐれで!」
そんなネイムに向けてアズールはさらに獣を増やして放った。
しかも数だけでなく、その大きさも先ほど以上のものであったが……
「無駄だ」
剣を振るうその瞬間だけ、光刃が巨大化して一瞬にして獣を消し去る。
「な・ん・で……!
アマテラスに耐性があるはずだろ! なんでそんなあっさり消してやがるんだよ!!」
思わず絶叫してしまうアズール。
だが、その感想はアズールだけではなくミツヒデも同じ感想だった。
アズールへと触れようとした瞬間、その身体は霧となって触れなかったし、アマテラスの効果があったとは言えない。
なのにネイムのアマテラスはしっかりと効果を発揮している。
これはどういうことなのだ、と。
『なんつぅ力技だよ……』
一方で、タケルはその現象を理解していた。
何のことも無い。
霧となった状態では当然ながら物理的な干渉は無効となる。だからネイムは獣相手にてこずった。
そしてアマテラスだが、一応効果は発揮していたのだ。
しかし接触している面だけはごくわずか。アズールの魔力をもってすれば大した被害ではなかったし、魔獣の力の一端となれば通常の魔法よりも無効化は難しい。故にミツヒデの接触はアズールには通じなかった。
だが、ネイムはそれを無効化した。
アマテラスの刃の形を変えて、効果範囲を広げ、その圧縮された無効化能力でアズールの力を強引に消したのだ。
――だがこれは諸刃の剣。
ネイムの錬刃は、その効果が爆発的に上昇する半面、効果時間が圧倒的に短くなる。
効果時間は最大で5分。
使用の度合いを考えれば、あと3分も持てばいい方だろう。
『――ネイム、さっさと決めろ!』
「わかってる」
進路を遮る獣も霧も、そして氷の刃も容易く消し去り、確実にアズールとの距離を詰めるネイム。
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