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「こ、この……来るな! 来るんじゃねェ!!」
アズールがメイリンの身体を使い、氷の刃を持たせて襲い掛かってくる。
だが、体術の技量なら達人の域にだって達しているネイムにはそのようなものが通じる筈もない。
右手でその細い手首を掴んで動きを止めた。
「――は、はは!
無駄だ、そんなもん!!」
掴んだ手はアズールが身体を霧にすることで逃れる。
この霧にも、さきほど獣にやったようにネイムが剣を振ればどうなるのか?
「その剣を使えばどうなるのかわかってるのか!
メイリンちゃんも俺も無事じゃすまねぇぞ!!」
アズールの言葉はもっともだった。
今のネイムの持つ光刃は、魔力を圧倒的な力で打ち消すだけでなく、その圧縮したアマテラスの刃は触れるだけで物体を切り裂き、熱を帯びている。
メイリンに向ければどうなるかなど、わかりきったことだ。
「ああ――だからこうするんだ」
ネイムの左手にある光刃が、再ぶアマテラスの噴出。
かと思えば、ネイムはそれを地面に向かって突き立てたのだ。
「はっ、何やってんだよてめ――」
アズールがネイムのその行動を嘲おうとした。
その瞬間、アマテラスの光がその場で広がっていく。
「極・烈光陣」
技名を言った瞬間、強力な閃光が発せられて、一瞬でアズールはその光に呑まれた。
「――あ、え」
アズールがその瞬間に感じたのは、痛みだった。
「あ、が……ああああ!!」
アズール……いや、メイリンの身体には一切の外傷はない。
だが、回避しきれないほどに広範囲で、圧縮されたアマテラスの光に体を包まれたことで、アズールがメイリンに発動させている魔力の効果が一気に解除されていく。
それを拒むアズールに対して、痛みと言う形でそれらは現れる。
「――さっきまでの威勢はどこにいった?」
痛みに苦しむアズール。
周囲が銀色の光で包まれている状況で、ネイムはゆっくりとした足取りで近づいていく。
「く、くるな……!」
足がまともに動かず、その場から動けないアズールが恐怖に固まった表情でネイムを見上げる。
「メイリンを、返してもらうぞ」
その言葉と同時に、白銀の光はさらに強くなる。
「がぁ」『がぁ』
メイリンの声に、別の男の――アズールの声が重なって聞こえてきた。
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