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しかし、白い騎馬隊にぶつかる直前、その背後に赤い塊が見えた。
「反転!」
二列でそれぞれ馬首を左と右に回した。
その間を、赤い槍が貫く。
李祥の騎馬隊だった。
呂広の作った道を駆け抜けて来たか。
そのまま李祥の騎馬隊は駆け去って行き、呂広の騎馬隊は引き返し波勝と合流した。
「岳真に背後へ展開させろ。李祥の備えだ」
厄介な敵を自由にさせてしまった。
劉仁というより、呂広の戦略だろう。
狙いは最初から李祥を戦場の外に出すこと。
それによって、公傑の援軍にも行けるし、曹仁がそう思って油断していると戻ってきて奇襲をかけてくることも予想できる。
一万を張り付けて対策するしかなかった。
「張コウ、中央。夏侯尚と曹泰が左右の翼となって前進。騎馬隊には注意しろ」
大軍で押しつぶすつもりが、一万も兵力を削がれてしまった。
あの紅白の騎馬隊は手強い、と曹仁は思った。
指先が震えていた。
心臓の鼓動は一定でなく、条玉は初陣以上に緊張していた。
兵百人の隊長である。
他の百人隊長の面々は、徴兵を経験したことのある農民であったり、退役した老兵であったりしている。
条玉だけが、唯一の純粋な農民だった。
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