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閑静な住宅街にある低層マンション。
その角部屋に悠花さんと柴田君が言う『アトリエ』はあった。
「最初は借りるつもりなかったんだけどね。
ここから見える中庭の桜と楓が気に入ったの」
何事もないようにサラリと言う悠花さんだけど、その広さと部屋の光景に息をのむ。
「羽村、その辺座って。
コーヒー飲める?」
「あ、うん……」
まるで自宅のようにてきぱきと動く柴田君に驚き、飲めないと言い出せず反射的に頷いてしまった。
そして『その辺』が分からず戸惑う。
フローリングのだだっ広い部屋の中。
家具という家具はひとつもなく、イーゼルが立ち並び、床には色とりどりの絵の具や筆が躍るように散乱していて、幻想的だった。
「あー、ごめん。
そこ3本のイーゼルの下にあるデッサン以外は動かしても大丈夫。
だよね?センセー」
呆然とする私に気がついた柴田君が、悠花さんに同意を得て空間を作ろうとする。
「あ…………」
「ん?どした?」
「あ、うん。
なんか………花びらが踊ってるみたいだったからもったいないなって………」
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