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「んだよ、抜け駆けかよー。いいなあ」
もう一人の子が、友人の横っ腹をふざけて小突く。
「ねえねえ、彼女さんと何したい?」
僕は友人に聞いた。「俺も聞きたい!」と、隣にいる子もノリノリで友人を見る。
「そうだなあ…。やっぱチューか?」
「ええ、チューは早いって!もうちょっと時間経ってからじゃね?まずはデートして、手を繋いでからだろ」
「…キス」
ファーストキスどころか、彼女もいたこと無い僕は、キスの感覚を想像するだけだ。
僕は何気無く、カイトのそばに行くことにした。
「ねえ、カイトくん、キスってしたことある?」
「…お前、とうとう頭狂ったのか?」
「もう、違うよ!」
僕はいつものように、カイトの机の前にしゃがみこんで肘を机の上に置く。カイトは相変わらず、本から目を離さないままだ。
「で、無いの?」
「無いって…、俺女子苦手だし…」
「そうなんだあ!」
こうして自分のことを見せてくれるようになったのも、近づいている証拠だと思う。
不意にチャイムが鳴る。最後の授業が始まるのだ。
「ほら、早く戻れよ…」
「はーい!」
これが終われば一緒に帰れる。僕は放課後が楽しみで、意気揚々と席に戻った。
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