第一章 「変化する始まり」

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「んだよ、抜け駆けかよー。いいなあ」 もう一人の子が、友人の横っ腹をふざけて小突く。  「ねえねえ、彼女さんと何したい?」 僕は友人に聞いた。「俺も聞きたい!」と、隣にいる子もノリノリで友人を見る。 「そうだなあ…。やっぱチューか?」 「ええ、チューは早いって!もうちょっと時間経ってからじゃね?まずはデートして、手を繋いでからだろ」 「…キス」 ファーストキスどころか、彼女もいたこと無い僕は、キスの感覚を想像するだけだ。  僕は何気無く、カイトのそばに行くことにした。 「ねえ、カイトくん、キスってしたことある?」 「…お前、とうとう頭狂ったのか?」 「もう、違うよ!」 僕はいつものように、カイトの机の前にしゃがみこんで肘を机の上に置く。カイトは相変わらず、本から目を離さないままだ。  「で、無いの?」 「無いって…、俺女子苦手だし…」 「そうなんだあ!」 こうして自分のことを見せてくれるようになったのも、近づいている証拠だと思う。  不意にチャイムが鳴る。最後の授業が始まるのだ。 「ほら、早く戻れよ…」 「はーい!」 これが終われば一緒に帰れる。僕は放課後が楽しみで、意気揚々と席に戻った。
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