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僕はカイトに話しかけるのをやめた。友人のそばにずっといて、珍しいと驚かれた。
「どうした?カイトのとこ行かないな、今日。喧嘩でもしたのか?」
「いや、そういうのじゃないんだけど…」
僕はカイトをちらりと見る。いつもと変わらずに、カイトは自分の席で本を読んでいた。
ひょっとすると、僕が勝手に気まずくなっているだけで、カイトは気に止めていないのかもしれない。それは少し寂しいような気もしていた。
このままは確かに嫌だった。しかし、自分の気持ちのイレギュラーさもわかっていたから、どうにも出来ずに時間が過ぎる。カイトから話しかけてくることは普段から無かったため、カイトの声を聞くことは無かった。
時間が過ぎる。そうこうしているうちに、全ての授業を終えて、部活以外の生徒は皆帰っていく。
「アユム…、今日一緒に帰ってもいい?」
友人を誘うと、驚きながらも承諾してくれた。
「じゃあ、行こうか」
そう言って歩き出す友人について行き、教室を出ようとする。その前にこっそりカイトを見た。カイトは振り返って、こちらを見る。ふと、目が合った。
「…ハル、どうした?」
立ち止まっていた僕を心配そうに見つめ、友人は僕の名前を呼ぶ。
「う、ううんっ、何でもない!」
友人は笑ってまた歩き出して、僕はとうとう教室を出た。
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