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下駄箱で靴を履き替えながら、僕は友人と談笑していた。カイトのことで思い悩んでいても仕方無いと考えていたのだ。忘れるわけではないけれど、落ち着こうと思っていた。
帰ろう。また明日があるから大丈夫だ。僕は玄関の扉に手をかけた。
「…うわっ!」
学生服の襟を掴まれたと思ったら、間髪入れずに後ろへと引っ張られる。突然の衝撃に、僕は対応が追い付かず、仰向けに倒れた。
しかし、床に尻がつくこともなく、僕の体は誰かの腕に受け止められた。
「…カイト、お前何して」
友人の声が呼んだ、僕の好きな人の名前に驚いた。
「こいつ、借ります。じゃあ」
僕を立たせると、カイトは今度僕の腕を掴んだ。
「ええっ、カイトくん!?」
「何だよ!?おいハル!」
僕を呼ぶ友人を無視して、カイトは僕の腕を引っ張って歩く。
そんなカイトの後ろ姿を、僕は好きだと思った。やっぱり、好きだと思った。
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