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跳び箱までの助走を走って、踏み切り板を跳んだ。しかし勢いも空しく、跳び箱の三分の二の位置でおしりをついてしまった。出来なかったことが恥ずかしくて、俺は慌てて跳び箱から下りた。
「ほら、だから言っただろっ、出来ないって…」
「…ふんふん」
俺の言い訳も聞こえていないのか、奴は顎に手を置いて、何か考えているようだった。
「おい…、聞いてんのかよ」
「怖じ気づいたね!」
「…はぁ?」
やっぱり聞いていなかったのか。加えて恥ずかしさを増すような発言をくらい、苛ついた声を出してしまった。
そんな声も聞こえていなかったのだろう。奴は未だににこやかだ。
「まず、怖いのを無くす必要があるね。勢いは十分だからそのままで。あとは、手をつく位置をもっと前にして」
「そんなことして…、落ちたりしないのか?」
自分のことながら、あまりに女々しい発言に勝手に恥ずかしくなった。
馬鹿にされると思った。しかし奴は、そういう意味では笑わずに、「大丈夫」と言った。
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