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私は、彼がしようとしていることの罪深さを知っている。
私は、彼の行いが悪であることを知っている。
私は、彼を止める方法を知っている。
そして私は、彼を止めることの罪深さも知っていた。
だから私には彼を止めることができない。
──ごめんなさい。ごめんなさい。
「できた……!」
小一時間振りに空気が揺れた。
白衣を翻した彼の額には、モノクロでもはっきりとわかるほど大量の汗が滲み出ていた。
「あとはこのエンターキーを押せば、俺の全てが終わり……倫、お前のターンだな」
そう言って彼はいたずらっぽく笑った。
四十間近のくせに、右頬にだけできるえくぼのせいでとても子供っぽく見える。
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