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「奢っていただいて、すみません………」
こちらから誘ったのに、私の新しいブランドバッグには財布が入ってなくて。
ロト6に当たったお母さんと一緒にいたから財布は不要かと、ハンカチと携帯だけ新しいバッグに移し替え、財布は元のバッグに入れたままだったのだ。
そのバッグは今、母が持っている。
それに気付いたのは会計の時で………。
「………財布がない………」
と青ざめる私に、智志さんは迷惑がることもなく会計を済ましてくれた。
「ほんと、すみません……」
「お気になさらずに」
彼氏でもない男性にお金を出してもらう発想を持ち合わせてない私は、ただ申し訳なくて。
ニコリとまた微笑まれ、私はしゅんと肩を落とした。
「千咲さんは私の周りにいる女性と全く正反対ですね」
そう言われ、私は首を傾げる。
「智志さんの周りにいる女性って、どんな人ですか?」
疑問をそのままぶつけると、智志さんは困ったように微笑んだ。
「そうですね………。
真っ赤になって俯く人や、やたらとベタベタしてくる人。
媚びた態度を取る人、挙動不審な人。
明らかに不快感を表す人。
家柄や年収を聞いてくる人。
まぁ、いろいろです」
「ろ、ろくな女性がいませんね……」
イケメンならではの悩みだろうか。
不快感を表すというのはゲイというのがばれた場合の人だろう。
「ははは。確かに」
あっけらかんと智志さんは笑い飛ばすけど、きっといろいろ大変な思いをしてきたんだろうな。
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