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暫く二人で宛てもなく銀ブラしていると、智志さんがとても申し訳なさそうに切り出した。
「すみません、この後仕事が入ってまして……」
その様子から、なかなか切り出せずにいたであろうことが推測された。
暇そうな私に付き合ってくれていたんだ。
なんて優しい人だろう!
「そういうの、早く言ってくださいよ!
私は一人で帰れますので、もう行ってください。
あ、今日の分のお金は必ずお返ししますので!
今日はありがとうございました!」
男は仕事をするもの。
そう父親から聞かされて育ってきた私は、これ以上智志さんを留めておくわけにはいかないので、頭を下げるなりくるりと回れ右をして歩き出した。
呆然と立ち尽くす智志さんに大きく手を振り
「仕事、頑張ってくださいね!」
そう言葉を投げ、また前を向いて歩き始めた。
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