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暫くパソコンと格闘していると、頭上から聞き覚えのある声がした。
「千咲さ~ん」
この声は………。
「大滝君………」
「昨日はどーも。すっごいイケメン連れてましたね」
ニヤっと悪戯っ子みたいな笑顔を作る大滝君に、私は慌てて説明をする。
「あのね、昨日の人は友達だよ。変な誤解しないでね」
そう。
彼はゲイだから、私よりもどちらかと言えば私より大滝君の方がタイプなんだよ。
一瞬、智志さん×大滝君の絡みを想像してしまい、頭が沸騰する。
美男同士………意外と、アリだわ。
私、今までBLとか興味なかったけど………。
ちょっと勉強してみようかな。。。
「ほんとに友達ですか!?」
「そうだよ。昨日、私から友達になってくださいって頼んだんだから」
「???」
大滝君は意味が分からないふうに小首を傾げてくるが、これ以上私語をする訳にもいかないので、この話は強制終了させた。
「昨日のチョコ、ありがとうね」
まだ封を開けずに引き出しにしまってあるチロルチョコのお礼を告げる。
あの桜味って、初めてなんだよね~。
食べるの楽しみ♪
ふふふと、思わず笑みが零れる。
「………」
しかし、大滝君は黙ったまま、私をじっと見つめていた。
「な、何……?」
少し驚いたような大滝君を訝しげに見つめ返す。
「あー、いやー」
大滝君は私から視線を逸らすと、頭の後ろを掻きながらポッと頬を染めた。
「千咲さんの笑った顔、久しぶりに見たなぁと思って」
「………。私、そんなに無愛想かな?」
それなりに笑ってるつもりだけど。
智志さんには『よく笑う人』だって言われたし。
「自分で思ってるより会社では、千咲さんは無愛想ですよ。ここに皺寄せて」
と、私の眉間をつんつんとつつく。
途端に、御所望通りの眉間の皺が登場したのは言うまでもない。
「はは、戻っちゃった。
千咲さんが笑ってくれるなら、またチョコ差し入れしますね。
千咲さんは笑ってる方が可愛いですよ」
大滝君は爽やかな笑顔を振りまくと、営業部へと戻って行った。
なんだ?
33歳の女を捕まえて『可愛い』とは………。
一体大滝君は何をしたいんだ?
頭の中は“?”でいっぱいになった。
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