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戸惑う私をよそに、母と店員さんは数着服を私の前に当てる。
「こっちがいいかしら?」
「まぁ、お似合いです」
「顔が地味だからこういったのもいいかしら」
「そちらはこの春の新作となってます」
私は数着母に押し付けられると、フィッティングルームへと押し込まれる。
「お母さんはお金使う機会ってそんなにないから、千咲は値段は気にせず好きなの選んでね」
仕切りの向こうから弾んだような声が聞こえる。
値札を見れば、手に汗握るような金額だ。
お、お母様、いったいいくらロト6が当たったんですか!?
しかし、来月友人の桜の結婚式あるのも事実。
それに見合ったようなものを一枚着てみる。
派手な物は苦手だから、ブランド名が表に出てこないようなデザイン。
シンプルな紺のワンピースを試着してみる。
さすが有名ブランド………。
超庶民顔の私も、なんとなくそれなりのお嬢さんに見えるではないか。
「試着できた~?」
母が返事もまたずドアを開ける。
「まぁ、似合うじゃない!」
「そ、そう?」
「うん。似合う似合う!
すみません、これくださーい!
このまま着て出かけるので、値札は切ってください」
「え!?えぇぇぇ!?」
戸惑う私に母はまたにっこり微笑む。
「いいじゃない。新しい服ってウキウキするでしょ」
それから母はこのワンピースに見合った靴とバッグも合わせてお買い上げ。
いったいこれだけでいくらするか、分かってますか………?
後で請求書が回されませんように………それだけを祈った。
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