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───誰?このイケメン。
年は私より少し上だろうか。
上質そうなストライプの入ったスーツ姿の男性。
悦子さんとよく似た綺麗な顔立ち。
奥二重で切れ長の黒い瞳に、無造作ではあるけど艶やかな黒髪。
鼻筋もすっと通っていて、唇は薄く形がいい。
肌も色白できめ細かく、髭も薄い。
細い銀縁眼鏡の奥からチラリと覗く目元のホクロと、時折動くのど仏が色っぽい。
今はやりの“塩系男子”だ。
その男性はそんな私たちを見て驚いて固まっている。
「まぁ、座って?」
そう悦子さんに促され、母は悦子さんの前に、私は男性の前に座らされた。
「こっちは、私の息子の、智志(トモシ)です」
悦子さんがそう紹介すると、智志さんは目を丸くして悦子さんの腕を取った。
「何の真似ですか、母さん…!」
少し荒い口調だけど、悦子さんは素知らぬふうに会話を続ける。
「今年で35歳で、SEをやってるの」
「すみません、私の話しも聞いてください……」
「仕事ばっかりで、浮いた話もなくて………」
「おい、母さん!」
ぴたりと会話を止めた悦子さんは、キッと横の智志さんを睨みつけた。
「あなたはこうでもしないとお見合いなんてしないでしょ!?」
「お見合い!?」
そう声を上げたのは私の方。
そのワードで、不可解な母の行動の謎が解けた。
散々お母さんの見合い話を断って来たから、ついに強行手段に出たわけだ。
ジロリと母を見れば、「千咲だって同じでしょう?」と悪びれた風もなくそう返された。
「ほら、そちらさんもお見合いって了承してないみたいじゃないですか。
私はまだ結婚する気も………」
「お向かいの金子さんは、智志と同じ年なのにもう3人もお子さんいらっしゃるのよ?
お母さんだって孫を抱きたいの!!」
「だからってこんな無理やり……」
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