Shalom Chaverim

2/5
21人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ
「わぁ、キレイ」 五歳になる娘が広場にある桜に向かって駆けていく。 青々とした芝生に可憐な色を添える、桜の木たち。 春になると新興住宅地の一画にあるこの広い公園は、整然と並ぶそれらを愛でようという人々で賑わう。 ここがかつてあった高校の跡地だということを知っている人は、元々この辺りに住んでいた人たちくらいなんだろう。 「綺麗だね」 遮るもののない陽の光に目を細めた夫が、娘を見ながら呟く。 私たちは娘が小学校に上がる前にと、去年の終わりに私の実家近くのここへ越してきた。 だから勿論夫も、この土地のそんな過去は知らない。 「……そうね」 少し離れた場所から娘が私たちを呼んでいる。 温かな家族の休日。 娘に手を振りながら歩き始めた夫の背を眺めて、私も静かにそのあとを追いかけた。
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!