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「そういえば兄ちゃん、最近勇者召喚がされたって噂は知ってるかい?」
コーヒーを楽しみながら雑談をしていると、不意にマスターがそんな会話を切り出してきた。
「ああ、まあ話し程度には」
嘘です。既にファーストコンタクト済みですが。
「で、その勇者がどうしたんだ?」
「いや、噂では随分勇ましいお人柄だっていう話なんだが、兄ちゃんはどう思う?」
「勇ましいねぇ……」
あれが勇ましい?まあ、トラブルには勇ましく首を突っ込んで行って引っ掻き回すが。
「まあ、噂だから信憑性に欠けるけどそういう噂が流れてる時点でそれに応じる何かがあったんじゃないか?よく言うだろ?火の無いところに煙は立たないって」
「確かにそうなんだが……火元が問題なんだよ。
召喚を行ったのがどうも第一王女殿下だそうじゃないか。あの方の放蕩っぷりは有名だからなぁ……誇張された鍍金の勇者って可能性もある」
鍍金どころか名前だけのハリボテ勇者だったけどな。
それに鍍金の勇者なんてキ◯ト君に失礼だろう。
「と言うか、そもそもだけど勇者を召喚する意味があるのか?
かなり平和な世界だと思うんだが?」
「まあそうなんだが……王家曰く邪神の復活が近いからそれの切り札に召喚したそうだ。
もっとも、そんなのは建前で王家に優秀な子を作らせる為の種馬って噂の方が有力だが」
「種馬ねぇ……いかにもあのビッチが考えそうなことだな」
「王女殿下と面識があるのかい?」
「直接では無いけどな。さっきこのデパートの中で多分その勇者と一緒に居たぞ。
いかにも高飛車って感じだったよ」
不敬罪完全アウトの会話をしながら苦いコーヒーを飲み下す。
心なしか先程よりも風味が苦々しくなった気がしてきた。
明日そいつらと会うんだよなぁ……学園長も心配だが、俺のSAN値も心配になってきた。
途中でキレたりしないだろうか。
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