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「今日使い魔召喚の儀式だろ?」
「ああ!どんな奴が来るのかな?
強い奴が出て来ればいいな!」
「はぁ………」
周りの男子達の言葉を聞き流しながら、私はアンニュイな溜め息を吐く。
「どうしたんだよ、カナ?
元気無いな?」
机に突っ伏して気だるさを全身で表現していると、そんな私に男っぽい口調で、でも可愛らしい声が掛けられた
「レン……忘れたの……?今日は使い魔召喚の儀式があるんだよ?」
重い首を持ち上げ、大胆にも私の机に腰掛けている声の主の名前を呼ぶと、声の主は快活そうな笑顔を苦笑いに変えた。
私がレンと呼んだ人物は、私の唯一血の繋がった家族で、双子の姉だ。
私と同じ青い髪を肩口でバッサリと切り揃えている、どことなく活発そうなイメージを持つ。
「ああ…そういやそうだった……まあ、なるようになるさ!」
そう言ってカラカラと笑うレン。
「そのお気楽な性格が羨ましいよ……」
「カナが気にし過ぎなんだって。
周りの奴らにどう言われようがあたしらはあたしら。
それでいいじゃん」
「はぁ………」
どうして双子なのにこんなに性格が違うのかな?
確かに私が気にし過ぎなのかも知れないけど、だからレンのこういうところはほんの少し羨ましい。
「そう言えば、「無姓の落ちこぼれ姉妹」は儀式に参加するのかな?」
「無理だろ、魔力も満足に扱えないのに契約なんか出来ないって」
そう言って大声で笑いだす男子達。
それにつられてクラスのほとんどの生徒達が笑いだした。
「無姓の落ちこぼれ姉妹」とは、私とレンのことで孤児だから姓が無いことと、魔法が当たり前の世界で満足に魔法が使えないことから付けられた呼び方だ。
「うぅ……」
「大丈夫だって、なんとかなるからさ、な?」
「うん……」
『1年生全クラスに連絡、これより召喚の儀式を執り行う。
今すぐ校庭に集合せよ』
いつも通り居心地の悪さを全身で感じていると、そんな放送が入り儀式を待ちきれない男子達が歓声を上げて教室から飛び出して行った。
「ほら、あたし達も行こうぜ。
遅れたりしたらまた文句言われちまう。」
「うん」
最後まで気は進まなかったが、レンに手を引かれて私もすっかりガラガラになった教室を後にした
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