群狼の長

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『雷ちゃん、早く起きないとお姉ちゃんがキスしちゃうぞ?』 「ハッ!?」 身体中に電撃が走ったような感覚に襲われ、微睡みの中を漂っていた意識が急激に覚醒する。 目を開けて真っ先に目に飛び込んで来たのは、白塗りの見慣れた天井。 次いで俺の微睡みタイムを強制終了させた音源、いつだったかの誕生日に姉さんから貰った目覚まし時計を視界に認め大きく嘆息する。 どうやら休日にも関わらず何時もの癖で目覚まし時計をセットして寝てしまったらしく、時計を見たらまだ朝の6時だった。 これが平日だったらこれから弁当の用意やらゴミ出しやらで忙しくなるのだが、流石に休日にまで家事に追われることもあるまい。 「久し振りに軽く運動でもするかな………」 本来ならば二度寝にでも洒落込みたいところだが、先程の目覚まし時計により眠気が吹き飛んでしまっている。 最近は仮想世界以外で運動らしい運動はしていなかったので、久し振りに軽く体を慣らそう。 そう決めた俺は部屋着を脱ぎ捨て、運動用のジャージに着替えた。 「取り敢えず寝起きだし、軽めに十キロくらい走るか」 手早く軽めの朝食をとり、洗顔等の準備を済ませた俺は家から出て、靴をトントン鳴らしながら呟く。 いきなり無理に運動をしても体に毒になるし、さしあたっては軽めにランニングくらいがちょうど良いだろう。 「よし!それじゃあ行って来ます!」 誰にともなくそう声を上げ、まだ人通りも疎らな住宅街を駆け出す。 アナザーワールド内ではAGIーSTR型の超攻撃型ステータス編成なので、こうして実際に走るとその速度に如実な差が感じられる。 まずアナザーワールドでは自動車以上の速度でフィールドを駆け回っているのだ。脚にはそこそこの自信を持っている俺でも現実では流石にそこまでの速度は出せない。 というか、人体の構造上そんな速度で走るのは不可能だ。
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