群狼の長

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「ふう……」 ぐるりと街の外周を一周し、都合十キロちょっとを走破した俺は手近なところにあった公園に入り、そこにあった水道で喉の渇きを潤す。 贅沢を言うならば電解質を含んだスポーツドリンク系の飲料が欲しかったが、残念なことにこの辺りには自動販売機の類が置いてないので一先ず水で我慢することとする。 「ん~……いい朝だ」 足に蓄積した乳酸と疲労を少しでも和らげようと、ウロウロと割りに広い公園をのんびり歩く。 疲れている時はさっさと腰を落ち着けたくなるが、それは健康上あまりよろしくない。 クールダウンはしっかりとしないと怪我の元にもなり得るので、運動の後はこうしてのんびりと体から力を抜くように心掛けている。 「あれ?雷翔君?」 「んあ?」 公園の花壇に植えられた色とりどりの花を見ながらのんびり歩いていると、俺の背中に最近最も良く聞いているであろう声がかけられた。 「ルナ……じゃない、輝宮?どうしたんだ?こんなところで。あ、おはよう」 「おはよ。どうしたって……私はシロの散歩だけど、雷翔君は?この辺りに住んでる訳じゃ無いよね?」 振り返ると、そこには朝の陽光に純白の髪を照らされながら立つ輝宮が居た。 その足下には輝宮にピッタリと寄り添うように主人によく似た真っ白の毛を持つ仔犬が舌を出しながら俺を珍しい赤と青のオッドアイでじっと見ていた。 「俺は朝早く目が覚めたから久し振りにランニング。今は休憩してるとこ。 この辺は初めて来たけど……輝宮はこの辺に住んでるのか?」 「うん、この近くにね。この公園でよくシロを散歩させてるんだ。 それにしても、アナザーワールドで別れてからまだ5時間経ってないけど寝なくて大丈夫なの?」 「ああ、大丈夫。生存本能が三大欲求を叩きのめしてくれたお陰で全然眠くないんだ」 「朝から何があったの……?」 俺の貞操を狙う実姉の愛の囁きかな。 もちろん、そんな事を言って懐疑的な視線を向けられるのは嫌なのでそれは心の中にとどめておくが。
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