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「そういえば雷翔君、ランニングしてたって言ってたけどいつも走ってるの?」
ようやく疲労も和らいできたので、近くにあったベンチに二人並んで腰を落ち着ける。
すると輝宮がそんな事を聞いてきた。
「いや、たまにかな?体が鈍らないように時々動かしてるだけだから、日課とは言えない位」
「そういえば雷翔君ってリアルでもかなり運動出来たっけ。
体力テスト、全項目で全国一位だったっけ?凄いよね」
「よく知ってるな。でも体力テストで分かるのなんかは基礎体力だけだからな、部活とかで特定の体力を伸ばしてる人にはやっぱり敵わないさ」
「でもやっぱり凄いよ。私なんかリアルじゃ全然運動出来ないもん」
「そうなのか?」
アナザーワールドの中では全くそんな風には見受けられなかったので、つい驚きの声を漏らしてしまった。むしろあの動きは普段から運動をしていないと出来ない動きだろう。
「小さい頃から体が弱くてね、あんまり長時間の運動は止められてるんだ。
最近は少しずつ体を慣らして運動出来る時間を延ばしてるけど」
「へえ……じゃあアナザーワールドは一種のリハビリみたいなものか?」
「そうだね、体の動かし方を忘れないためのリハビリ。まあ、最近じゃ単に楽しくてやってる感が強いけど」
そう言って明るく笑う輝宮。
確かに、アナザーワールドで片手剣使い(ソードマン)ルナとして活動している輝宮はいつも楽しい時は笑う、悲しい時は泣く、腹が立った時は怒る、と他のプレイヤーには無い感情の豊かさを持ち、全力であの世界を生きているように見える。
本人はリハビリと称しているが、輝宮にとってアナザーワールドとはこの現実世界と同じくらい大切な≪自分が生きるもう一つの現実≫なのだろう。
「そういえば雷翔君はそんなに運動出来るのに部活とかは入ってないよね?何か理由はあるの?」
「ん?いや、大した理由は無いよ。単に家事が忙しくて部活とかをやってる時間が無いだけ。
まあ、部活とかにあんまり興味が無いっていうのもあるけど」
正直な話、部活のあの熱い雰囲気というのが苦手なだけなのだが。
そんなことだから枯れてるだの老木だの誹りを受けるのだとわかっていても苦手なものは苦手なのでしょうがない。
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