16999人が本棚に入れています
本棚に追加
当然、攻略組の面々がそんな大きな隙を見逃すわけも無く、防御体勢をとっていた軽装備のプレイヤー達が機敏な動きで壁役とスイッチし、一斉に高位の連続技スキルを発動させる。
今まで良いようにやられていたプレイヤー達の鬱憤を晴らすかのごとく次々と叩き込まれる高威力のスキルは、フェンリルのHPを着実に減らしていく。
そして一通りのスキルが終息し、フェンリルが動きを取り戻すと、既に五段目のHPは半分を割り切っていた。
ここでようやくHPバーの色が緑から黄に変化し、それを見たこの場に居る殆どのプレイヤーが思わず歓声を漏らした。
「いける!いけるぞ!!」
「油断するな!攻撃パターンの変化があるかもしれないから動きに注意しろ!」
思わず誰かがそんな声を漏らし、空気が弛緩しかけたが、キースがすぐさま鋭く声を上げ無理矢理緩みかけた空気を引き締めた。
やはり対モンスター戦でのキースの指揮能力は相当に高いようだ。
俺は決闘の際に彼に「対人戦闘はそれほど上手くはない」という評価を下してしまったが、それは彼が純粋なPvM特化プレイヤーだったからなのだろう。
これは彼の評価をまたもや塗り替えねばならないだろうか。
そんなことを考えながら戦局を見守り続ける。
どうやら回復部隊のリーダーは戦闘を見ているうちに俺への不信感など忘れてしまったかのように食い入るように高次元の戦闘を見つめていた。
「ん?」
戦闘の観察を続けていると、俺の耳にとある音が届き、そちらに視線を向ける。
そこには氷漬けになった無敵の盾のメンバーが並べられており、どうやら音源は俺の一番近くに居たアルマダらしい。
なんだかピキッという何かが割れるような音がしたような気がしたのだが、アルマダはまだ氷像と化したままだ。
気のせいだっただろうか。
首を捻りつつ、再び戦闘に視線を向けようとすると、再び俺の耳にピキッという音が届く。
最初のコメントを投稿しよう!