群狼の長

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このゲームをプレイするための媒体のヘッドギアにはどうやら幾つかのセーフティ・システムが設計されているようだが、脳と直接視認、聴覚、嗅覚、触覚、味覚……と膨大な情報をやり取りするという特性上そのキャパを大幅に超えた負荷が脳にかかった場合に対する安全策も一応は取られているらしい。 そういえば読み込んだヘッドギアの説明書にもそんな記述があったような気がする。 説明書には、ヘッドギアは常にユーザーの脳波を観測しており、脳波が異常に乱れた時などに強制切断を行うという旨の事柄が書かれていた。 おそらく、その「脳波が乱れる」事象の具体例が先程の俺のようなオーバーワークなのだろう。 あの時は一瞬だけ何かつっかえが外れたような感覚と共に意識が一気に加速したが、今思えばあれより先に行ってしまうと切断されてしまう可能性もあったのだ。 咄嗟だったとはいえど、なんとも危ない綱渡りをしたものである。 「ゴアアアアアアア!!」 自らの無謀さに苦笑いを浮かべ、思わず自嘲の表情を作ると、少しばかり離れた場所でフェンリルが恐ろしげな咆哮を上げた。 殆ど反射でそちらに視線を向けて、フェンリルのHPを確認してみる。 どうやら急拵えの一個小隊は自分達が思っていた以上の結果を残してくれたようで、フェンリルのHPバーは遂に五段目から色を消滅させ、最後の六段目へと移行していた。 俺がそれを確認した次の瞬間、フェンリルはぐうっと体勢を沈み込ませて跳ね上がり、攻略組の小隊から大きく距離をとったところに着地する。 すると恐らくこれで最後になるであろう遠吠えを始め、取り巻きのウルフ達を召喚する。 五段目になった時点で10体を召喚したが、流石にここまで来てそれより少ないということはあり得ないだろう。
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