群狼の長

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と、ぼんやりとそんなことを考えていると、ドームに開いた巣穴から次々に青い影が飛び出し、咆哮を続けるフェンリルを取り囲む。 「おいおい……勘弁してくれよ………」 その光景を見て、隣でアルマダが呻くように呟いた。 フィールドに飛び出してきたブルーウルフのは五段目から更に五匹が追加され、その総数を十五匹にまで増やしていたのだ。 数の利はこちらにあるとはいえ、フェンリルを抑えたまま奴らを相手にすることは流石に難しい。 最低でも十人から二十人はフェンリルの抑えに回らねばならないとして、回復役八人魔術師八人を除くとウルフの殲滅に回れる人数の理論値は三十六人。 だが今は動ける楽園の全メンバー二十九人はフェンリルの相手をしているし、更にそこに五人の無敵の盾のメンバーが入っていて彼らは身動きが取れない。 そうなると当然ウルフの殲滅に割ける人員の数も変動する。 今の状況では、ウルフに割ける人数は二十一人とかなりのロスが生まれることになる。 「ライト、流石にこれはヤバそうだ。一先ず俺達はウルフを狩ろう」 アルマダは冷や汗が滲む禿頭をつるりと撫で上げると、背中のホルスターから両手斧を外し、構え直す。 「そうだな……出来るだけ早く狩らないと」 「よし。俺達は二、三人で分かれて確実にウルフを減らしていく。 ライトは最初と同じく自由に動き回ってどんどん狩ってくれ。スキルワンパンで殺れるんだろう?」 「あー……まあ……多分」 アルマダの言葉に、なんとも歯切れの悪い言葉を返す。 手を握ったり開いたりして調子を確かめて見るが、この世界との親和性がまだあまり高くない俺にはこれだけでどの程度の力が発揮出来るかは分かりようもない。 流石になんだかんだで十分は休めたのでルナに休みを宣告された時よりは良いパフォーマンスが出来るとは思うが、アルマダの期待に沿えるかは正直なところ微妙だ。 「まあ、やるだけやってみるさ」 微妙ではあるが、それは挑戦しない理由にはならない。 苦笑いを浮かべながらもどうにかその言葉を絞り出すと、アルマダはにっと笑って「それで良い」と呟いた。 「それじゃ、人死にが出ないうちにお前は魔術師共の援護に行ってこい。俺達も直ぐに参戦する」 「了か……イエッサー」
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