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反対側の列に視線を移せば、少し淋しそうな表情をしたお兄ちゃんが見えた。
そんなお兄ちゃんに軽く微笑んで見せると、お兄ちゃんもぎこちなく笑顔を返してくれた。
………お兄ちゃんにはどれだけ感謝してもし足りないよ。
お父さんとお母さんが亡くなった時も。
高校、短大を卒業するときも。
初めての恋人に失恋した時だって。
いつだってお兄ちゃんがあたしの側であたしを支えてくれたんだ。
あたしは今日、昂生の元に嫁ぐけど………お兄ちゃん大丈夫かな。
少し不安な気持ちになってしまったけど、お兄ちゃんの手にそっと手を重ねた里緒ちゃんを見てホッと胸を撫で下ろした。
お兄ちゃんには里緒ちゃんがいるし、大丈夫だよね?
渡辺里緒ちゃんは武田さんの部下でもある、お兄ちゃんの彼女。
二人の年の差は12歳もあるけど………初々しい二人はとてもお似合いだ。
そしてお兄ちゃんと里緒ちゃんは、あたしたちの結婚式を見届けた後、結婚式の準備に取り掛かる。
式はこれから半年後。
『お兄ちゃんの方が年上なんだから、あたしたちより先でもいいんだよ?』
そう提案したけど、お兄ちゃんは毎回首を横に振った。
『俺は千波を見届けてからじゃないと、落ち着いて結婚なんてできないよ』
里緒ちゃんも『健さんに合わせます』って言ってくれて、それに甘えることにした。
次は、お兄ちゃんの番だよ?
今まであたしのせいで我慢した分まで、いっぱい幸せになってね。
そんな想いを込めて、あたしは手にしていたブーケを里緒ちゃんに渡した。
「千波さん………」
うるうると瞳に涙を湛えてあたしをみる里緒ちゃん。
「お兄ちゃんをよろしくお願いします」
頭を下げて顔を上げれば、ギュッとブーケを握りしめる里緒ちゃんが顔をくしゃっとして微笑んだ。
「任せてください!
健さんは私が幸せにします!絶対に」
そんな里緒ちゃんに苦笑しつつお兄ちゃんは頭を掻いた。
「まいったな………俺の台詞盗られたよ」
ふふふ。
お兄ちゃん、尻に敷かれそうだなぁ。
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