1846人が本棚に入れています
本棚に追加
/88ページ
「………先輩、ブーケトス無しなんて、酷いですぅ」
披露宴に移り、あたしと昂生の写真を携帯電話に収めたところで、七海ちゃんはそう口を尖らせた。
「あ、ごめん………。
でも七海ちゃん、彼氏いたよね………?」
「別れました!
………って、もう!忌み言葉なんか使っちゃったじゃないですか~!
こんなおめでたい日なのに~」
七海ちゃんは彼氏ができてもあまり長続きしないらしく、今現在、彼氏はいないらしい。
「健さん、紹介してもらおうと思ったのに、もう彼女いるんですね………はぁ」
以前から、何故かお兄ちゃんファンの七海ちゃんは、仲睦まじく寄り添うお兄ちゃんと里緒ちゃんを見て溜息を吐いた。
「お兄ちゃんはもうすぐ結婚するんだけど………。
あっちのテーブルはお兄ちゃんの後輩弁護士さんもいるよ」
こそっとそう教えてあげると、七海ちゃんは突然目を輝かせた。
「チャンスは向かってくる時に掴むものなんです!」
なんだかよく分からないことを言いながら、私が教えたテーブルへと向かって行った。
「面白い子だね。
時々お茶出ししてくれる子だよね?」
昂生が口元に手を当てて笑いを堪えながらあたしに囁く。
「うん。普段は頼もしい後輩なんだけどね………」
ちょっと苦笑いを零しつつ、七海ちゃんの健闘を祈った。
楽しい家族や仲間たちに囲まれて、再度幸せをかみしめた。
大切な人たちに見守られ、昂生とあたしは永遠の愛を誓った。
新しくできた優しい義父母、そしてもうすぐできる年下の義姉。
お兄ちゃんと二人で生きてきた私も、家族が増えた。
陽人との思い出は楽しくも切ないものだったけれど、これからは昂生と共に人生を歩む。
新しい未来を────
最初のコメントを投稿しよう!