第一章 出会いの日

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「そうかなぁ、晃はもう、真義と同等位の実力はつけてると思うけどなー」 「我らの不意打ちも、もう既に躱せるようになったのだからな」  二人の鬼は口々に晃を褒め称える。それが嬉しくもあり、同時にむず痒い。彼らの言う実力とは、あくまでも“修行”の範疇に過ぎない。 「あれあれ、ひょっとすると、褒められると怒るタイプだったかな、晃は」  余程難しい顔をしていたのだろう。義達が心配しているのか冷やかしているのか分からないにやけ面で覗き込んでくる。義継が馬鹿っと苦笑する。 「晃はまだ実感が無いのであろう。我らが世辞を言っているのだと思っているのだろうよ、なぁ?」  どっちも見当外れだ、馬鹿と心中で苦笑する。だが、心地は決して悪くない。悪くない事に慣れてしまっていく自分に焦りを覚える。そんな本当の所の晃の心情等には気づきもせず、義達と義継は台所に戻る。  台所にはガスが通っていない。元々、霊術者――霊術の使い手を総称してそう言う――が一般人の目に留まらないように配慮して建てられた施設であり、極力外部からの支援を受けずに済ましている。  竃に火を付けて料理をする。マッチやライターではない。霊術を使う。義継が霊符を放って火を付け、義達が手印を結び、鍋に水を張る。何気ない動作だが、料理に適した水の量と火の勢いを用意するのは至難の業でもある。
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