第一章 出会いの日

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 霊力を大量に注げば、それだけ強力な霊術が生まれる。それだけなら然程難しくはない。力を出すだけならば。それよりも、大なり小なりの術をそのまま維持し、制御する方が遥かに難しい。  まだ、晃がここに来たばかりの頃は、この鬼の兄弟達に散々打ちのめされた。負けると必ず霊術で料理を作る課題を言い渡される。やたらと難しい料理ばかりで、霊術をやりなおかつ、料理の修行もさせられる羽目になったが、おかげで霊術の制御と料理だけは一人前に出来るようにはなった。 「義継」 「む?」 「火の勢いが強すぎる。それじゃ中の野菜が崩れるだろ」 「お、おぉ、そうであるな」  食事を用意される側というのは気楽なものだ。横からたまに指示を出しつつ、料理を待った。修行者の食事と言うと、質素な印象があるが、ここでは栄養こそが霊気の源であるとして、中々立派な食材が並ぶ。  軽い運動後で、晃も腹が減っていた。ついさっき気に病んでいた事も、今だけは忘れる事が出来そうだった。味噌汁の香りを乗せた湯気に晃の腹の虫が呑気に鳴いた。
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