第一章 出会いの日

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†††  朝食が終わると片づけ。その片付けもまた、水気の霊術を使って皿を洗う。晃は霊符を使って皿の汚れを水気で拭いさる。初めてやった時は何枚も皿を割ったものだが、今は手慣れたものだ。  それが終わると昼まで鍛錬。晃は修験者の法衣を着込み、外へと出た。学校のように、特にカリキュラムが決められているわけではない。自身にあった修行法を自身で編み出す。また、編み出すまでが修行であるとされていた。晃がここで編み出した修行法は単純明快だった。 ――鬼達を倒す。  その目標を掲げた途端、五鬼達は昼夜構わず、襲ってくるようになった。こちらが気を抜いた時等はほぼ必ずだ。それが彼らなりの修行者に対する礼儀であり、愛情である事を晃はすぐに見抜いていた。  彼らが襲撃してくる時間帯はまちまちだ。一日何事も無かったかと思えば、就寝直前に襲ってきた事もあるし、かと思えば一日の間ずっと、息も吐けない程に鍛えられた事もある。  彼らが襲ってくるまで、晃ものうのうと過ごしているわけではない。近くの森林で、自主鍛錬や瞑想を積む。いずれも陰の界に入っての修行であり、鬼が襲ってこずとも物の怪が襲ってくる場合がある。  前鬼の里から十五分程歩いた登山道に、巨樹群がある。一面、木々と生い茂った緑で霊気を感じる才の無い旅行客ですらも、神秘的な空気を感じる事の出来る場だった。  ここで霊術の修行や、霊力の制御の鍛錬を積むのが、晃にとっての日課となっている。  だが、今日は先客がいた。その姿を見た瞬間、晃の心は晴れやかになった。 「師匠、お帰りでしたか」
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